詩学社を救え

現代詩フォーラムからの転載です!


*****


突然ですが、詩学社が倒産しました。

今日、社長の寺西さんに会ってきました。
もうこの際だから、ぼくの知ってることを話しますと、実は去年末から、ぼくは
陰ながら資金援助を行ってきたんですわ。といっても、無利子でお金を貸す程度
でしたが。

んで、現在の詩学社の状況ですが…ぼくの予想をはるかに越えた、絶望的な状況
でした。
ほとんど破産に近い、とのことで、案の定ぼく以外からも借金があって(大部分
は銀行らしいですが)、債務整理に東奔西走してるとこです。
現在の事務所(兼住居)の家賃も払えないそうで、今月末か遅くとも来月には引
き払って、寺西さんは鳥取の実家に帰るそうです。
再起どころか、借金だけを残して、完全消滅するしかない、というのが、今の詩
学社です…。

んで、今、事務所には、多量の詩集と、『詩学』のバックナンバーが在庫として
置いてあります。
今は「千円でもほしい状態」だそうで、ぼくは昭和30~45年までの『詩学』を中
心に、100冊以上買い取りしました。
詩学社を救う奇跡が起こりうるとしたら、詩集と『詩学』バックナンバー在庫を
みんなで買い取りすること、でしょうかね。
詩集は古本屋に持ってっても二足三文でしょうから。
shigaku1@hyper.ocn.ne.jp
にメール注文すれば、受け付けられるそうです。
どうかみなさん、よろしくお願いします。

註:「借金を返してもらいたいための宣伝」ではありません。ぼくの分の借金
は、現在、返済凍結としています。したがって、詩集の売り上げは、ぼくの懐に
は一切入ってきません。
by 角田寿星

http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=136729
http://po-m.com/forum/thres.php?did=2390&did2=152

詩学社 http://www7.ocn.ne.jp/~shigaku/

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結晶核、とらわれて

雨粒、または雪の結晶にはその核となる微少な「ほこり」があります。
あんなに美しい結晶ですら不純な核を中心に持つのですね。
一見、綺麗に見える人の心はどうなのでしょうか?



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あなたの夜に流れたい

ビジネスホテルの白い天井に映される
窓枠の形は青白く
夜の闇にある光源を証明します


いつしか街で一番高いビルの
冷たく四角い丘の上で
僕も証明されたいと立ち尽くすのです


月も星も街灯も、車の前照灯も
その影をほんの少しだけ分けてくれます
薄く青白いその証明


もっとはっきりとした影が欲しくて
両手を上に広げ太陽にあこがれるのですが
夢がかなえばじゅっと焼かれてしまいます


誰かに焼かれてしまうくらいなら
気圏にはじかれない速度と角度で
この身を激しく証明したいと思うのです


この身を摩擦で残像にかえ
短い恋も真実であったと
あなたの形を閃光で証明したいのです


あなたが夜空を見上げたときに

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低い風に雲を流せば

風のかたちになりたいのです


なのに
縫いつけておいたはずの秋風が
かたちをうばいました


(ほたる  湯けむり  はぐれ雲)


うばわれたと思ったのは勘違いでした
かたちがないことが風のすみかだったのです


(落ち葉  風花     花吹雪)


風の残すものは
いつも儚いものばかり
季節すらもすみかにして


風のかたちになりたいと願い
あんなにも激しく恋した夏すらも


(黄砂   風紋     渡り鳥)


気流のかたちに姿を移し
星宿を流していきました

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まどろみ

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太陽記念日

すかんぽの季節や柳花の季節
夕映えや朝焼け、風や波や雪や月
星座がめぐり、夜と交錯する
めぐる暦の後ろ正面

それら無限の流れの一部を
自分勝手に切り取った
昨日と今日とか明日という
真実と信じる座標軸

ひとはいつでも不安だから
限りのない時空の中に
自分の絶対座標を求める

そして今日は
特別な日

巨大な素粒子加速器の研究施設で
微少な宇宙の光にふるえたり
突然の白銀世界の小さな雫の光に
ため息をつき

同じように孤独で、不安だから
誰もがそのことを確認し
一斉に自分たちの時計を12時に合わせる

そんな奇妙な日だ

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流・星・影

白く濁る息のむこう
見上げる双子の星座

「お兄さんは六重連星なのよ」と
得意げに笑ったひとの面影

私を何台もの車が追い抜き

ヘッドライトが
影をいくつにも切り裂く

星は私に
影すら与えてはくれない

ただ、ただ遠く

そっと瞬くだけで

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函館山

今日、両親から荷物が届いた

シャケは辛塩で、焼くと真っ白になる
タラコは無着色で,見た目はマズそう

毎年
これら北海名物を口に運びながら
函館山に打ち寄せる
海峡の早潮が岩に砕けた白濁の泡を
おでこのあたりに思いかえす

星空の一番明るいところを切り取ったような夜景を見るとき
その背中で、砕け散る波たち
そのざわめき
そのつめたさ

父と母は坂道を降りた魚屋で
そんな故郷の記憶まで詰め込んで
決まってこの季節に
送ってくるのだ

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タンポポ紳士録(準備はいいかい?)

旅立ちにはもってこいの日和だ

風は南南東
ロウソク工場の煙から推測するに風速は2m
30cmより遠くへは
誰も運んじゃくれない

みんながうらやむほど
上手に飛べるわけじゃない
辿りついたって
コンクリートの上かも知れない

それでも今日
旅立つ

宿命でも
運命でもなく
それがタンポポという
生き様だから

SN310007.JPG
(au W21S / Sony Ericsson にて撮影)

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あのポスト

学生時代に旅した外国で
たくさん手紙を書いた
両親や兄弟や友人へ

砂漠に近い
ひどく乾燥した扇状地の街
ボロっちいホテルの一室で
二度とはき出せないような
甘い寂しさの詰まった手紙を書いた

大切な女性に

ホテルの受付カウンターに組み込まれた
古ぼけたポストに
それは必ず投函された
私がその細い隙間の奥に
手紙を押し込んだのだから

結局、その手紙だけが届いていなかった
詰められた言葉はどこに消えたのか

ふと、夕日に染まった岩山の見えるホテルを
思いかえす
手紙はまだあのポストの中のあって
勇気を振り絞った私の言葉を
人知れず抱えているのかも知れない
そしてポストはこの胸の中にあって
あの暗闇とつながっているのかも知れないと

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詩集「逆光の喪失」

ココフラッシュのユーザーカテゴリーには今までアップした記事がリンクされることは無いようなので、いままで掲載した詩を詩集という名目で見出しにしました。リンクされないんじゃ折角「詩」というカテゴリーに置いておいても寂しいですからね。

もし、気に入った詩があれば、コメントなどいただければ、結構幸せです。

ではでは・・・

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すきになるひと

いつもおなじようなひとを
すきになる

おなじようなふんいき
でも、ちがうひとだとしってるのに

おなじようなしあわせを
おいかけるからとしっているのに

いつもおなじように
「傷つく」

おなじようなひとを
すきになるからとしっているのに

だんだんジブンがキライになる
ジブンがキライだから
どうにでもなってしまえと思う

じぶんにはかけてる
ところがある
そうやってきづく

きづいたら
やっぱりくるしいね
そのいきぐるしさが
いきてるしょうこ


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Route 25

言葉だから伝わらない
そんな気持ちがある

つたうものの意味がわからない
なぜ涙を流したのか
君の口をついて出るのは「どうして」という言葉だけ

僕には言葉がなかった
体の芯をふるわす、この気持ちを
だから黙り込んでしまう

  いつもの川沿いの道を
  11000rpmで駆け抜ける
  モーターの音
 
言葉では伝わらないから
そばにいなくちゃいけない
そう叫んでいる
そう叫んでいる

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夏の喪失

東の真っ黒な積乱雲から
道ばたの斑点が来たのかと
街灯の向こうに目をやる
真っ青な空を押し上げるように
夕日が染まっている

 高校生だったあの日
 影もない真昼の道ばたで立ちつくしたのは
 君の口から不意に漏れた
 別離の花言葉のせい

 そして夏は喪失した
 照りつける日差しも
 焦げ付いたアスファルトも
 心を焼くことはなかった

花火の響きが聞こえはじめて・・・

こうしてまた、季節がめぐり
あの時のあなたに邂逅する

いつのまにか街灯が月より明るくて
僕はしばらく
あの日と同じように
立ちつくしていたようだ

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かぞえて

信号待ちの残りを教えるシグナル

携帯電話の着信履歴

窓を過ぎる鉄柱

サボテンのとげ

読んでいない本の背表紙

あなたにつたえたいことば

あなたからもらったさやしさ

遠くまたたく星々

打ち寄せる波

死んだ夢の年齢

蝉の脱け殻

ゆっくりと数えてみる

気まぐれな風に旅立った
タンポポの綿毛たち

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遠い雷鳴

日が傾くころになって
北の山のうえのほうが
うっすらと暗い様子を見せた

空の音速で裂ける音が
こだまのように聞こえる

待っていたわけでもないのに
急にせかされたみたいに
胸が騒ぐ

忘れかけていた
別れの思い出が
あの遠くの空で
つらぬかれた

だからなのかもしれない

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入口

入口

その日は
抜けたように晴れていた
夜を揺らしていた雨が
君のように去ってしまった

空はうっとしい明るさ
寝不足だからといいわけをして
うつむきかげんに部屋を出る

いつもの暗い路地を抜けると
牛丼屋のまえで
昨夜のなごりの手鏡が
私の中のせまい青空を映していた

自転車が水をはねて消える
わかったことは
もう君が居ないということだけ
そんなことだけだ

This poetry is offered to an "entrance.":TEST PHOTO

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鞄の中にいつもある
わたしの本

たくさん、将来の夢や
青くて笑っちゃう打ち上げ花火のことや
知らずに背負ってきた時間や言葉
愛してるとささやいた面影や
離したくない手のぬくもり

誰よりも早く目覚めた朝、庭に咲いていた青い花

そんな物語が中途半端に書いてある

いまは、その本を開くことはない
だから忘れてしまうのだ
どんなことを
どんなふうに忘れてきたかさえも

表紙の手垢だけが
私の生きてきた証だから

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ながされるもの・ながすもの

流れ 
落ちる

どんどん押し流していく

かれらのぐち
ざんぎょうのつかれ
れんきゅうのよてい
きょねんのおもいで
もっとむかしのおもいで
もっと、もっとむかしのゆめ

雫が額をつたった気がして
ふと手の甲を当てる
無遠慮なクラクションに突き刺されて
胸が痛む

雨に濡れた茶色い猫が一匹
目の前を渡ろうとして、引き返した。

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この大地の深くに

太陽をたくさん浴びようとロゼッタに広げた

ちいさな自分が
雨でながされないように
背伸びした分
地面に足を差し込んだ

春の終わり
生まれ変わる季節
大地の深くから吸い上げた
いっぱいの夢を
綿毛にのせて
風にのせて

誰にも知られず努力したから誰よりも遠くに夢を飛ばすんだ

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雑踏

あのころを忘れようとして
もがくほど深まる想い
瞳の奥がまぶしくて
目を閉じて胸が熱くなる

横断歩道を渡りそこねて
通りの向こうに見える
人垣に

桜は
春の訪れではなく
冬の終わりを告げる花を咲かせるのだと
気付かされる

いつか君とここを渡った
深くって暗い谷のように黒い
この通りを手をつないで渡った

渡りきったとき手を離したのは
僕だったのか君だったのか
雑踏に見失ったふたりの
あした

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月輪

5月1日の夜は薄曇りでした。

月が、それでも煌々と輝いていて
見上げると
うっすらと月はリングをまとっていました

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星よりとおく

窓の外は少し北風の吹く夕暮れで
これから南極老人星を見ようと
大きなパラボラのあいだを抜けて
昔、友をなくした修行者が涙で掘り抜いた文字があるという
絶刻の岩屋のあるこだかい丘に
向かおうとしていた

これからであれば
ちょうど星の頃に着くだろうと
夕食かわりのおにぎりを差し出しながら
宿のおやじが言う

南の空のずっと低い場所にある
その星を見ると長生きができるという
みんなは必死で星を求めたけど
私はあなたの横顔ばかりみていた

そらが宇宙を映し出す鏡になって
絶対に手の届かない宝石をちりばめても
気が付かなかったのだ

あなたは
そのばらまかれた別の星の周りを巡る
違う惑星に住んでいたことを

ふと、振り返ると
陽が沈んでからずっと同じ場所で見つめている
ひとつの星明かりの下に
自分の影を踏んでいた

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むねのおくのひろいそら

きおくと おもいでは にていて
ときどき
くべつがつかなくなる

  きおくはつまらなくて
  おもいではどんどんかわっていく

ふんすいごしにみるつきは
いまそこにあるのに 
おもいでのようで
あの よるのように
そう、こおるようにうつしい

  ふれられないものをとおくにかんじるように
  ちかくにあるものを、みうしなっていたなら・・・

ふいのおもいにのしたでふるえる
「さむい」というと、みんなは「はなびえだからね」というけど
ほんとうは はなにふるえたのだ

きびしいふゆのさむさのなか
こんなにも月夜に にあう
はなやかなはなを
ただかすためにはぐくんでいた            ---※
さくらのきの そのすがたをおもい
わたしはふるえたのだ

ふゆのあいだそれにきづかなかった
じぶんのこころにふるえがとまらなかったのだ
あのひとのおもいにきづかなかったこころに

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朝焼けの動悸

あなたがどうしても静かな海を見たいというので
どこまでが空なのかわからないぐらい
真っ暗な夜の果てに走り出す

敦煌につづく砂丘の砂や
その空を埋め尽くす瞬きよりも
多くの言葉で
あなたにつたえたい想い

あの旅舎の埃まみれの
簡易ベットにこしかけて
薄汚れた天井を仰ぎ
まぶたをとじておもったのは
みなみのそらの
ししのほし

激しく淡い  あの恋のようではなく
深く静かな 幻想の人のようでもなく
ペルシャの宝石の色をした
あなたへの想い


あなたといることの痛みが
わたしの生
天国でも地獄でもない
いま生きていること。
それがあなたといること。
それだけが私のほんとうだから

静かな朝焼けの海にも
波が押し寄せている
しゃべりすぎて息をきらした
私の鼓動のように

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桜の季節に思い出すこと

この時期になると思い出すことをつらつらと・・・

そのいち ・ タンポポ調査

高校時代、生物の先生の手引きで学校周辺のタンポポ調査をしました。思えば、タンポポという植物への思い入れはこの時にできたのですね。クラブ活動で天体観察などもしていましたから、私の精神世界のルーツかも知れません。この季節になると桜よりもタンポポの花が気になる変わり者です。

そのに ・ 吉野で雪と桜

大学時代の友人夫婦と大滝村の奥にある秘湯に言ったときの話。桜が満開に近い季節だというのに、吉野では積雪になるほどの大雪。でもその時の風景はホントに美しく、目に焼き付いています。天川から洞川、そこから峠を越えて大滝村に抜けるルートは今でも大好きなドライブコースです。

そして ・ ソメイヨシノ

桜・ソメイヨシノ。この花が一斉に咲くのを見て思い出すのはこの木が「接ぎ木」だけで増やされた、遺伝子的には全く同一の、一本の木であると言う話を聞いたこと。日本中にあるソメイヨシノはたった一本の原木から接ぎ木で増やされてきたのだという事実を告げられたとき、なんとも不思議な気分になりました。同じ木だから一斉に咲くのですね。もし、ソメイヨシノを枯らす病気が大発生したら一気に滅びかねない危うさ。種をつけることのない美しいことだけを求められた木。

一斉に咲くソメイヨシノを見るとき、このことばかりが思い浮かび、花に語る言葉が見つからないのです。

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タンポポ紳士録(桜の季節)

春を告げる使者は黄砂
雪柳は季節の妖精
あらゆる成功者が
出発の時に見上げる
桜の花
人よ昼も夜も彼女を見上げ酒を飲めと
暖かい日差しが告げてまわる

  だけどみんなのあしもと
  高い空を見上げて咲いているよ!
  ただの黄色い花だけど
  誰よりも強く生きているよ!

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タンポポ紳士録(ほんとうのあなたよとわに)

埋没林
自分のあさはかな夢の一束

辛辣な意識の暗雲に惑う
やりきれぬ鳥の一群

なぜ狩人のように追い求めないのか
矢を捨てて荒野をさまようのか
自分を閉じこめる檻は
自分の過去で作られているのに

 さびしいのなら  くちぶえをふけ
 かなしいのなら  なみだをながせ

(心の奥 タンポポの いのちとばして
  昨日とか 明日ではない 今日だけの生き様を見せて)

遠い国の盆地に満ちた 朝霧をついて聞こえるうたごえ

思い出して 
月に照らされて
君が一番君らしい
アルビレオの星踊り


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タンポポ紳士録(冬のタンポポ)

季節の雨が激しく淋しく舞い降りる
音も立てずに叫ぶ
今日までの惜念

輝くため息の色に染まった雲
あなたとの間に
愛以外の何かが存在したから
あのコバルトの蜻蛉は
雪が降るまで死ぬことはない

透明なタンポポの綿帽子
ひとひらも飛ばすこともなく
嵐はいってしまったから
私はもう
あなたをさがして旅立つことは
もうない

すべてのもの失って
それでも咲こう
かならず来る季節のために

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タンポポ紳士録(透明な漆黒)

あなたが髪を切ったとき
あの社の向こうの深々とした森の
星達を抱いているかのような
木漏れ日のきらめきに

その漆黒が落ちて
わずかな風が
通り過ぎる 

「森はいいよね、わがままだけど素直だから。」

不思議な横顔を見せて
そのまま黙り込むあなたが
森になっていく

目の前にあるのに
すべてに触れることは叶わない

木陰と日だまりの境目に
今日も空を仰ぐ黄色く小さい花
それが私とあなたの
胸のうちに秘めたあたらしいきめごと

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季節がめぐっていく

風の強く吹く夜だ
雲が巨きな鳥のかたちに裂けて
デネブがその向こうにたたずんでいる
雨が
日の沈んだ方向からながされてきて
私は無意識に背を向ける

雲の裂け目は渡っていき
つめたいものがほほをぬらす
そのままうつむくのは
なにかから逃げるように感じたので
私はくらやみをこえるようにして
踏み出してみる

どんどん鳥は遠くへ去って
冬の空気が季節に戻ってくる
ひとはいつも
こうして季節とともに
なにかをさがして繰り返すのだろう

あなたと出会える変節が
再びかならず巡ってくると

すべてをうつした
あなたのくれた手鏡も


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枯れ葉が落ちて刻む音

高いビルにのぼって
街の明かりを何気なく
視線の遠くに追いやったとき
貴方のことが突然懐かしくて
水晶の野原を一緒に歩く夢を見た

勇壮な老木がその実を散らす季節
回転ドラムがピンではじく軽やかな旋律
朝の紅茶のような霧が上ってきて
風は奇妙なほど騒いでいるのに
あしもとで茅の穂が静かだ

今日という瞬間は過去なのか未来なのか
貴方の言葉もその瞬間に過去になる
いつまでたっても未来は今日のまま

手に入れない愛
憧れつづける恋

貴方と交わした、決して果たせない約束のために


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鳥たちの星座

星を頼りに鳥たちは渡っていくという

海と陸地のわかれる果ては
星の河の切れる果て
それよりも遠くに探す面影

(逆転層に遮られた雲が僕らの心ふさぐように)
(寒さが鳥たちを追いかけていく)

西の空が鮮やかに
まぶしい色に染め上がった日の夜
一斉に飛び立つときのあの羽音

(この夕日のなかで愛のない別れをあなたに告げたのだ)

鳥たちの小さな胸の中に
彼らだけの星座があり
  ・・・神の名を記して
  ・・・それを信じて
  ・・・鳥たちは渡っていく

(だからといってこんな寒い夜更けだけが
 二人を抱きしめているわけではない)

思わず鳥たちに叫ぶ
「ここにいる、ここにいる!」

(あなたは信じるか?こんな奇跡的な夜更けのことを)

季節はいつだったろうか
煌めく星の流れる河を
一羽の大きな鳥が渡っていくのをみた


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つぶやき

この高原で仲間達と
いつも星を数えていた

伝えたい思いは言葉になどできなくて
(冬の夜風が肌を刺すのに)
すすきが遠くの湿地の脇で揺れていて
(頬は暖かだった)

不思議な蛍石レンズ
組み合わせの向こうに映る光の渦を
君はしきりに気にしていたけれど

ぼくはそのまだ黒くなりきっていない髪が
風に揺れてその向こうに星が見えるのを
なんとも不思議に見あげていた

・・・あなたの髪が漆黒の空に
星を蒔いているように見えたから・・・

いつものように明日が来て
星座の角度も変わってしまったのに

星の回転板を回しながらぼくは
遠い昔のことばかりが気になっていた




  あのとき
  ぼくの差し出した問いかけに
  なんと
  君はつぶやいたのか

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タンポポ紳士録(飛翔する種)

はじめてこころのなかに
さいたたんぽぽのはな
かぜにからだをばらまいて
ぶんしのように
げんしのように
そりゅうしのように

たびにでるたび
かけらひろいあつめるたび
(霧がするどい稜線を越えていく)
とうとうこんなところまで

さあこれがそらだ
きみとぼくが
じゅうごさいで
ゆめにまでみたきょだいなそらだ

(すべてのかけらここにおきざりにして)
(ゆくえをなくしたみらい)

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宮沢賢治 生誕108周年

あまり「好き好き!」と周囲の人に公表しているわけではありませんが、実はすごく宮沢賢治の作品が好きです。あえて「作品」と書いたのは「宮沢賢治の人となり」への想いとは別に、ということでして賢治自身についてはまあそのうち書くこともあるでしょう、という気持ちです。

 さて、主題の通り今年は「生誕108周年」なんだそうで、108って数字は100よりも賢治っぽくていいかも知れないなぁと思いますねぇ。

 賢治の作品は教科書なんかで知られている作品がやはり「好き!」という方が多いのですが、私は単純にはそうでもありません。銀河鉄道の夜はいくつもある断片を彼の死後に順番を予測して再構成したものであってまったくもって<完成>されたものではないし、雨ニモ負ケズは「詩」というよりは手帳に書きつけた決意文のようなものです。もちろん賢治の精神世界を非常によくあらわした作品であるし私も大好きなのですが、なぜ<未完成>であることを前提に教科書に取り上げないのだろうかと思うことがあります。その未完成なところまでが賢治の世界であると思えばこそ、そう思うのです。「永訣の朝」も「松の針」「無声慟哭」という同じ1922.11.27に書かれた他の2作品とワンセットにしてひとつの精神世界なのだと教えて欲しいなとか。わはは、ホントに好きなんですよね〜。まあ、単にマニアックなだけだと思うので気にしないでください。

 おすすめっていうか、ぜひこのご時世に読んで欲しいのは「ビヂテリアン大祭」かな。体の十数%が牛丼とマクドで成長している私が勧めるのも変ですが、あらためて「命」について考えさせられます。

 詩編では「疾中」と呼ばれる作品群をぜひ読んで欲しいです。理想と宗教に生きた賢治が突きつけられた死への現実。「眼にて云ふ」「(その恐ろしい黒雲が)」「(丁丁丁丁丁)」「(風がおもてで呼んでゐる)」「夜」「病中」「(そしてわたくしは間もなく死ぬのだらう)」・・・生と死の境界線においてはじめて生きることのなんたるか、自分のなんたるかを読み手も突きつけられる作品たちです。

 最後に私の一番好きな賢治の詩 
 春と修羅 第二集 314番(1924.10.5)

 夜の湿気と風がさびしくいりまじり
 松ややなぎの林はくろく
 空には業の花びらがいっぱいで
 わたくしは神々の名を録したことから
 はげしく寒くふるえてゐる

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400Hz

風がいつも止むのは
この角度の影
きょう照りつけるおひさまに
きのうの風は弱りはて

水の底の虹のようなもの
こわして走る虫たち

あこがれやおもかげを
どんなに大事に抱きしめても

400Hzのサインカーブで
ぼくの心はゆらめいている

ほのおの先の透明なプラズマ

見えない想いが
いちばんあつい

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それがたとえ愛だとしても

花咲く前の
桜の枝を煮る
水は薄い桜色に染まる

なくしそうな記憶のひとひら
静かすぎてだれも気付かない

激しく燃えた瞳の指す先に
電柱の奏でる
バイオリンの季節

手をさしのべても
ふれるものもなにもなく

自分の胸抱きしめては
行方を探す

哀しいことばかりじゃなかったのに
あなたを思いだした途端
止まらないものがある

水面に映ったプレアデスのように
届かない

時間がある

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22番のバス

いつも見つめていた上海の闇
あの日から季節を違え
川沿いの石畳の公園を夢見ている
薫りはどんな風だっただろう
色はなんの花だっただろう
あなたが次第に思い出せなくなっていく

ガーデンブリッジ
オレンジ色・・・街灯
江浦路で降りる22番のバス
石炭の煤けた音、ボイラーから吹き出す水蒸気

(寂しかったから愛したわけではない)
(思い出を捨てたわけではない)
あの日、港で交わした口づけは
確かに砂漠の香りがした

今は上海の香りが
あなたとの思い出

なのに・・・
還らない時がひとつだけ・・・


22ban.jpg

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花ならば

花ならば

話し相手もいない
岩だらけの黄色い砂漠

高名な歴史学者も
優秀な地球学者も
天才的な物理学者も
知り得ない、絶対的な秘密を
地下水に抱かれた砂礫層の中にとじこめて

花が空ばかり見つめていたのは
誰かのための歌声
あの三日月と星を掲げる塔から流れでる
神へ捧げる歌をきこうとしたから

どうしても砂漠とずっと一緒にいたいなら
この身の全てを朝の雨にかえて
そそぐよりほかに
花には思いつかなかったから

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ポリアコフ・パレス・ガレージ

アルタイルからの風が
高原に 無数の季節を告げてまわる
それが秋なのか冬なのか宇宙なのか
わからないけれど

遠いかすかな残像に
軽い眩暈をおぼえる
いったいいくつの太陽が
ぐるぐると
追い越していっただろう

(ひとは明日が不確かだから、確かな昨日を懐かしむのか・・・)

どうしてだろう
星空を見上げて
いつも想うのは
あの時
森と星とのあいだで揺れた
音楽のような長い髪


白夜の夕暮れ時
遠い日の夜の虹

手は届かなくても
声ならば届くだろうか

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ことば

ほんとうに想う人よ
伝える言葉は,たった一言でいいはずなのに
不器用な私達は、いつもしゃべりすぎてしまう。
無防備に楽しそうな笑い声をあげたあとで
あなたの視線の先はどこなの?
言葉は街のつぶやきに消されて
湿っぽいビートの中で
ヘリウムのように軽く
差しだそうとしていた手のひらも
ビルの谷間の時間をつかむことがない
伝えたい本当の言葉はどこに行ったのか 死んだのか?消えたのか?
私にもわからないことが
どうしてあなたに伝わろうか?

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遠いところに貴方への気持ちがある

遠いところに貴方への気持ちがある

巨大な分光干渉計が
東からのスペクトルを
ひそかに関知しはじめる

遠い未来にしか
答えのでない問いを続ける
石灰岩盤にしみこむ雨水のように

音符のない愛の詩
うたいながら
白紙の聖典に目を落とす
孤独の巡礼者・・・何を祈る?

激しく沈む ヘリウム塊
緑黄色の緑を染めながら
寂しさを無限のゆらぎの中に放つ

愛しい貴方のもとへ 
光でさえ5年もかかるから